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2015年01月30日 (金) 07:58

JPAより患者申出療養(仮称)制度について


JPA事務局ニュース <No.181> 2015年1月29日

  <発行> 一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)事務局
発行責任者/水谷幸司
     〒162-0822 東京都新宿区下宮比町2-28 飯田橋ハイタウン610号
     TEL03-6280-7734 FAX03-6280-7735 jpa@ia2.itkeeper.ne.jp
     JPAホームページ http://www.nanbyo.jp/
 
 
☆約300疾病への医療費助成、安倍首相「できる限り7月に」と答弁
 患者申出療養は「保険収載に向け実施計画の策定等を求める」と
28日の衆議院本会議、川田龍平議員(維新の会)の代表質問に答えて~
 
 マスコミでも報道されていますが、1月28日の衆議院本会議での各党代表質問で、維新の会の川田龍平議員が、難病対策の完全施行時期について質問。安倍首相は答弁のなかで、「一日も早く実現してほしいという患者の方々の思いに応えるため、できる限り七月に約300疾病の医療費助成を実施できるよう、都道府県の状況などもふまえつつ準備をすすめてまいります」と明言しました。これまで厚生労働省は、「夏」あるいは「夏以降」という表現を使っていました。この問題での川田議員とのやりとりの全文は、次のとおりです(速記録から)。
○川田龍平議員
「私のような難病患者の長年の願いであった難病法が昨年成立し、消費増税分の使途として難病対策の予算が法定化されています。この夏には医療費助成を開始するとのことですが、前にもそう言ってずるずると延期されたという記憶があり、今回も先送りされるのではないかと患者は不安になっています。病気と闘う難病患者にとっては、一日一日が非常に貴重です。全面施行を何月に行うのか、難病対策に熱心に取り組んでくださっている安倍総理の口から是非この場ではっきりとお答えいただけますでしょうか。」
○安倍内閣総理大臣
「難病対策についてお尋ねがありました。難病に苦しむ方々の視点に立って政策を進めていくことは、私のライフワークと考えております。この難病対策を充実強化するための新法が本年一月に施行され、医療費助成の対象を第一次実施分として五十六疾病から百十疾病に拡大しました。本年夏には対象疾病を更に拡大し、第一次実施分と合わせ、約三百疾病とすることとしています。拡大の具体的な時期については、一日も早く実現してほしいという患者の方々の思いに応えるため、できる限り七月に約三百疾病の医療費助成を実施できるよう、都道府県の状況なども踏まえつつ準備を進めてまいります。」
 
 また、混合診療の拡大による負担増と安全性が危惧されている患者申出療養(仮称)制度について川田議員は、JPAが強く反対をしていることを示しながら、この問題は、わが国の国民皆保険制度が形骸化する危険があると指摘。薬害エイズの原告として長年闘ってきた自らの経験や、米国の実態なども挙げながら、この問題を命の安全保障として、国民皆保険制度を形骸化することのないようにと訴えました。この問題での安倍首相とのやりとりも、全文紹介します。
○川田龍平議員
  「命の安全保障について質問いたします。
   政府は、ドラッグラグに苦しむ患者を救うという名目で患者申出療養制度を新設し、保険外併用療養を拡充する法案を提出予定ですが、救われるターゲットであるはずの国内最大の患者団体、日本難病・疾病団体協議会が強く反対をしています。なぜでしょうか。我が国の国民皆保険制度が形骸化する危険があるからです。
   保険証一枚あれば全国の医療機関で平均水準以上の医療を安価で受けられる日本の皆保険制度は、世界から高く評価をされています。我が国では、医療は憲法二十五条に基づいた社会保障であって、政府には国民の命を守る責任があります。しかし、医療を商品として市場に委ねている米国では、政府は薬価交渉権を持たず、企業が自由に値段を付けるために、医療費も医療保険もびっくりするほど高額です。医療費が国家財政を圧迫し、医師の自殺が多く、医師不足が深刻化しています。日本を決してこのようなことにしてはなりません。
   患者申出療養制度が自由診療を増やし公的保険医療の範囲を狭めれば、治療費が払えなくなる国民は民間保険との二本立てにせざるを得なくなるでしょう。新薬も保険適用外となれば製薬会社の言い値で全額自己負担となり、米国同様に医療費がどんどん高くなるおそれがあります。
   国民皆保険制度で命を救われている当事者の一人として申し上げたい。経済成長も国の発展も、国民の命と健康があってこそです。憲法二十五条を基盤にしたこの制度を決して形骸化させることのないよう、その大きな責任を負う政府のトップとしてしっかり守っていただきたい。総理、お約束していただけますでしょうか。
○安倍内閣総理大臣
  「患者申出療養についてお尋ねがありました。
   患者申出療養は、患者の申出を起点とし、安全性、有効性を確認しつつ、先進的な医療を身近な医療機関で迅速に受けられるようにするものであり、同時に、保険収載に向け実施計画の作成等を求めることとしています。
   今後も、世界に誇る我が国の国民皆保険制度を堅持しつつ、困難な病気と闘う患者の思いにしっかりと応えてまいります。
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☆全腎協が院内集会「腎臓病患者の医療・生活の崩壊をくい止める
緊急集会1.27」を開催
 
 一般社団法人全国腎臓病協議会は、1月27日、参議院議員会館で「腎臓病患者の医療・生活の崩壊をくい止める緊急集会1.27」を開きました。寒風のなかを、集会には全国から多数の腎臓病患者が集まりました。集会では、何があっても人工透析が欠かせない患者の切実な生活の実態が紹介されるなかで、今、政府が今国会に提案しようとしている医療保険制度改革について、入院時食事療養費患者負担の引き上げ、混合診療の拡大につながる患者申出療養の創設、基準改定により不安が広がる透析患者、腎移植者の障害年金問題、入院ベッドの削減や介護報酬の引き下げ等々、これらのうごきをくい止めて、患者の命と生活を守ることを要望する要望書を採択しました。集会では、厚生労働省の担当者からの回答の後、かけつけた国会議員からも激励のあいさつが続きました。
 JPAは、この集会に水谷事務局長が参加するとともに、伊藤代表理事のメッセージを送りました。以下に全文を紹介します。
 
腎臓病患者の医療・生活の崩壊をくい止める緊急集会1.27メッセージ
一般社団法人日本難病・疾病団体協議会代表理事 伊藤たてお
 
患者運動の第一線でご活躍されている全腎協および地域の腎友会のみなさまの日頃のご活動に、深く敬意を表します。
年明けから、難病の患者に対する医療等に関する法律(略称「難病法」)が施行され、40数年の間、法律のないままであった難病対策がようやく根拠法をもつこととなり、総合的な難病対策の実現に向けての第一歩を踏み出すことになりました。医療費助成制度が義務的経費として予算化され、対象疾患も56疾患から300疾病程度へと大きく広げられることになりました。高い医療費負担に苦しみながら生活を続けざるを得なかった希少・難治性疾患患者の多くが救われますが、依然として数の多い疾患や長期慢性疾患患者は公費負担制度もなく、高額の医療費負担に苦しむ人たちも少なくありません。
政府の社会保障制度改革推進本部が決定した「医療保険制度改革の骨子」は、兼ねてから議論されてきた入院時食事療養費の自己負担引き上げ、紹介状なしで大きな病院にかかった患者への新たな定額負担の導入、75歳以上の後期高齢者に対する保険料軽減特例の段階的縮小など、すべての患者に負担増を課す方針が明示されています。入院時食事療養費の引き上げは、今年から始まった新たな難病医療費助成、小児慢性特定疾病医療費助成で入院時食事療養費が自己負担になったことに配慮して、両制度該当者については当分の間、据え置くこととされましたが、多くの患者にとっては大きな負担になります。
さらに「骨子」は、混合診療の拡大方針である「患者申出療養制度」(仮称)を、「困難な病気と闘う患者の国内未承認薬等を迅速に保険外併用療養として使用したいという思いに応えるため」として平成28年度から実施することを明示しました。
この患者申出療養(仮称)は、現在、例外的に混合診療を認めている保険外併用療養費制度の枠内に、新たに保険外併用のしくみを作り、患者の申出を起点とした自由診療を公認する、混合診療の拡大方針に他なりません。未承認薬、適応外薬を一日も早く患者の下に届けてほしいという願いは難治性疾患や進行性難病に苦しむ患者の共通の願いですが、その薬や治療法は安全性が十分に担保されたものでなければならないこと、低所得者でも治療が受けられる程度の負担額であることは、最小限不可欠の前提条件でなければなりません。今回の方針は、保険外負担がさらに拡大して患者負担が大きくなること、安全性の担保が不明瞭であり医療不信を助長しかねない点などからも問題があり、そもそも「困難な病気と闘う患者のために」と言いながら、この問題では、現在までに一度も、患者申出療養の審議検討をしてきた規制改革会議や中医協、医療保険部会から、患者団体へのヒアリング、意見聴取はありません。
この医療保険制度改革がスケジュール通り施行されるならば、患者負担や国民の医療への不信が広がり、せっかく法的根拠をもった難病法ですが、難病や小児慢性疾患、長期慢性疾患患者の医療や生活は、大きく脅かされると言わざるをえません。
JPAは、年金や入院ベッドの削減、介護保険の問題の含め、集会で提起されている4項目のすべてが、患者全体に共通するものとして全面的に賛同します。難病や小児慢性特定疾患、長期慢性疾患患者全体の課題として、これらの不安を取り除き、患者が安心して生活できるための制度改革を求めていくことを表明するものです。
寒い時期ですので、お身体にはくれぐれもお気をつけて、ともにがんばりましょう。
 
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<研究会等の情報>
□平成26年度厚生労働科学特別研究事業 進捗管理班 (難治性疾患実用化研究・腎疾患実用化研究・慢性の痛み解明研究) 成果報告会
「難病制圧に向けて -アカデミアにおけるイノベーション創出の現状と展望-」
 平成27年3月13日(金)10:00-17:30  東京コンベンションホール(中央区京橋)
 ◎患者団体からとしてJPA伊藤たてお代表理事があいさつを行います。
 ○参加申込みは、JPAサイトまたは臨床研究情報センターのサイトから。
http://www.tri-kobe.org/events/entry/nanbyo_symposiums/detail.html