線維筋痛症友の会 JFSA
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要望書
いよいよ、いわゆる「難病医療法」が施行され、「新しい難病対策」が形になろうとしています。
しかし、現在、線維筋痛症など慢性疼痛に苦しむ患者には、具体的・明確な国による救済策が打ち出されていないのが現状です。
この機会に、この間線維筋痛症友の会の理事会で話し合って作成している
要望書(抜粋)を公開いたします。
 
ここからが本当のスタートです。
今後厚生労働省等行政機関だけでなく、
様々な場でこの要望書と私たちの願いを発信していく予定です。
これからも継続的に行政をはじめ、色々な場で私たちの課題を知ってもらう、
考えてもらうことが大切だと思っています。
皆様のご理解・ご支援をお願いいたします。

 

※本資料を紹介等される場合は、必ず本ページ(へのリンク)をご利用ください。
無断転載等は固くお断りいたします。
研究・教育・啓発目的でこの資料を使われる際には、
個人/団体の別を問わずメール等で
友の会事務局宛てに転載等の可否をお問い合わせください。

 
(以下は2014年当時のものですので、今後改めて新要望書を発表する予定です。)
 
厚生労働大臣  様
厚生労働省 各担当部局 様
 
 
2014年 11月
NPO法人線維筋痛症友の会
〒233-0012 横浜市港南区上永谷2-12-11-102
理事長 橋本 裕子
 
 
「線維筋痛症患者救済に関する緊急要望書」
(抜粋)
 

私どもが抱える疾病「線維筋痛症(せんいきんつうしょう)」は原因不明の難治性の全身的慢性疼痛で、ICD10に収載されている疾病です。不眠や疲労などの多様な症状も呈しますが、眼に見えない痛みが主訴であるため、実際に痛みがあるのかどうか疑われることがあります。本邦では、2006年厚生労働省研究班の疫学調査がなされ、有病率は他の国と同程度の人口比1.7%(約200万人)だと発表されています。
 
この患者数に比して診察や治療をする医師は極めて限られており、入院施設もほとんどないというのが現実です。大多数の患者が、自分がこの病気であることを知らず、または受け入れ先を求めてさまよっている数年の間に症状が悪化してしまっています。発症から1〜2年のうちに適切な治療をして寛解した例は多くありますので、早期治療できる体制にしなければなりません。200万人という総数を考えると国の損失は膨大であり、医療と福祉の受け入れがない線維筋痛症患者には最低限の生活もいまだに保障されていません。
 
厚生労働省科学特別研究事業として、線維筋痛症調査研究班が発足したのは2003年10月。この間、各方面の努力により医療環境が変化してきたのは事実です。しかし、200万人もの患者は、毎日痛みを抱え、日常生活の困難、経済的な問題をも抱え悲鳴を上げているのに、社会生活上は全く救いあげられていません。
このような中、本年5月30日に「難病患者に対する医療等に関する法律(以下『難病医療法』、および児童福祉法の一部を改正する法律が公布されました。自分たちの病気の治療研究が進み、医療費助成が受けられることに期待を持っている患者は多いでしょう。
しかし、今の時点では、第一条において、“難病”を「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病」と規定しており、200万人いるといわれる線維筋痛症患者全体がその対象となることは極めて困難です。現状では法に規定する「指定難病」とならない疾患は、医療費助成以外の施策においても対象外となる心配もあり、自分達が生きる希望を持てるような具体策は何ひとつ打ち出されていません。
 
重ねて、今年春施行された障害者総合支援法では、130疾患の「難病等」がサービス受給の対象になることが話題になりましたが、線維筋痛症は対象疾患として明確に指定されていません。その上、現行の介護保険法においてさえも介護保険特定疾病には指定されていません。「痛み」「疲労」などの症状によるQOL,ADLの著しい低下は、介護や支援が必要な「障害」ともみなされていないのです。適切な支援を受けることで、病気の悪化を防ぎ、早期の社会復帰に繋がるにもかかわらず、患者のみならず家族も追い詰められ、最悪の場合は患者自ら命を落とすケースが後をたちません。
 
現在、2015年からの難病医療施行に伴い、具体的にどの疾病を「指定難病」とするかが議論されたり、実際の患者負担の変更内容などが明らかになりつつあるなど、その動向が大きな注目を集めています。難病医療法による難病対策は、基本的に「希少難病」のみを対象としていますが、線維筋痛症のように、患者数が多くとも、長期にわたって日常生活、社会生活が破綻し、経済的困窮をきたす疾患も多くあるのです。それらの疾患に対しては、本来は新たな対策が打ち出されねばなりません。希少難病対策は当然必須ですが、希少でない難病も対策するのが国としての疾病対策であるはずです。何とか現状の制度を適切に運用してこの瞬間も生きる希望を失い、絶望の淵にある患者と家族をどうか救ってください。
 
1,重症線維筋痛症(推計12万人程度)を指定難病とし、
治療研究や患者の生活支援に力を尽くしてください。

 
全国の医療機関では、多数の重症患者が確認されています。線維筋痛症研究班による「重症度分類」は日々の診療の積み重ねからうまれたもので、2003年に試案が提唱されています。2012年7月より、年金機構が示した診断書に添付(または請求後に照会)する様式にも、この重症度分類が採用されています。(参照:線維筋痛症学会編:『線維筋痛症診療ガイドライン2013』11ページ)。この重症度分類のステージ「V」に該当する患者だけでも、12万人(同資料20ページより推計)と言われていますが、線維筋痛症患者に対する行政の手当てが全くなされていない現在、正確な重症患者数の把握はいまだに行われていません。行政の施策の土台に乗れなければ、実態把握さえもされない、それが今のシステムの現状でもあるのです。
線維筋痛症には、厚生労働省研究班や線維筋痛症学会によって、「診断基準」も、このような「重症度分類」もあります。「患者数」が問題となるのであれば、まずは最重症者だけでも指定難病としてその実態を把握し、治療研究の推進や患者の医療費負担軽減をはかる事を強く要望します。
 
2、線維筋痛症患者の「痛みや疲労による生活上の困難」を、生活機能障害として認め、
障害者総合支援法対象疾患見直しの際、線維筋痛症を新たに指定してください。

3、線維筋痛症を、「介護保険法」における介護保険特定疾病に加え、若年者であっても居宅支援の対象としてください。

 
2011年に改正された「障害者基本法」においては、「障害者の定義の見直し(第2条関係)」が行われています。従来の3領域の障害や、発達障害に加え、「その他の心身の機能の障害がある者」が明記されました。また、「障害および社会的障壁の有無」を新たな基準として、障害を捉えなおそうとする視点が反映されています。この流れのなかで、2013年4月より施行された「障害者総合支援法」にも、特定疾患の一部や関節リウマチ等の130疾患が、行政機関による障害者サービス対象に新たに加えられることになりました。しかし、線維筋痛症は、この130疾患にさえ指定されていません。
 
痛みや疲労による生活上の困難は、見た目ではわかりにくいものですが、線維筋痛症患者は、同じような症状を抱える関節リウマチ患者以上の痛みを感じて生活しているといわれます。他の16疾病と同様に介護保険特定疾病となるはずです。
ちょっとした支援で相当程度の生活の向上が期待できます。また症状が固定していなくても、症状が悪化しているときには誰かの介護と経済的支援が必要なのは言を待ちません。適切な支援を受けるためには、障害者総合支援法や介護保険法などの対象疾患として、線維筋痛症を新たに加える、現在見直しが行われている障害認定区分に、生活機能障害の概念を反映させる、等の対策が必要になってきます。
 
 
4、若年性線維筋痛症の実態を早急に把握し、
学校等教育機関への疾患に対する理解を促すなど、
必要な施策を講じてください。

 
 線維筋痛症に罹患するのは、成人だけではありません。
「若年性線維筋痛症」は、発症年齢が10歳前後(小学校4,5年生)に集中しています。特異な「全身の疼痛性疾患」で、常に全身痛を感じ、原因不明の筋・骨格系の疼痛や持続的な頭痛、腹痛を訴え、睡眠障害や慢性疲労感など、成人と同じような多彩な自覚症状を呈します。80%の例が不登校に至り、摂食障害や歩行困難に陥る児童もいると報告されています。
適切な診断・治療を受けることにより、症状が軽快・寛解し、学校生活、社会生活に復帰できる可能性が大きいにも関わらず、疾患への認知度が低く、周りの理解がないなかで、学校でも家庭でも放置されたまま孤独と辛い症状に苦しんでいる子ども達が多くいるのです。
 この次世代を担う子ども達が抱える深刻な現状を早急に把握していただきたい。そして若年性線維筋痛症の適切な診断と治療体制を確立する、学校等教育機関にも疾患に対する理解を促す等、必要な施策を講じてください。
 
5、線維筋痛症の根本的な病因や、
病型分類に関する調査研究を後退させないでください。
 
線維筋痛症患者の身体に何が起こっているか・・・「脳や神経の機能異常である」という説が、研究班の調査や全国の医師・研究機関の努力によって明らかになってきています。2012年6月には、初の線維筋痛症治療薬として『プレガバリン(リリカ)』が保険収載されました。その他の機序をもつ薬についても、順次治験が行われており、第二、第三の線維筋痛症治療薬が保険適用になる日も、夢ではなくなってきました。患者にとって治療の選択肢が増えることは、何より希望の持てることです。
 
しかし、その機能異常がどうして起こるのか、それはまだ明らかにされておらず、患者は「病気は気のせい」「脳の病気なのだから頑張れば治る」など、いわれのない偏見や、思い込みによって苦しい思いをしています。また根本的な病因が明らかになっていない中では根治療法にはまだ遠く、ドラッグラグが解消されつつあっても、対症療法による治療しかないのは、以前と変わりません。
 
やはり、線維筋痛症が治る病気になるのが、患者の一番の願いであり、国家の経済的損失を食い止める有効な手立てです。引き続き、線維筋痛症の病因や病型分類に関する調査研究は、何より優先して継続していただきたい。
 
6、慢性痛の総合的、横断的治療の調査研究を深め、
課題を整理して具体的施策につなげてください
 
2010年9月、「今後の慢性の痛み対策について」の提言が公表されました。線維筋痛症も、広くは慢性疼痛の一病態であり、様々な対策が必要であることは、検討会の場でも議論されました。
 
この提言を受けて、慢性疼痛の診療体制づくりや医療従事者向け教材、患者に対しての教育・相談業務に関しての研究費が計上され、一定の成果をあげています。
 





○ 難治性の痛みには、帯状疱疹後神経痛や脊髄の障害による痛み等の神経障害性疼痛、線維筋痛症や複合性局所疼痛症候群のような原因不明の疾患、器質的原因が明らかでない歯科口腔外科領域の痛み等、様々な疾患による痛みが存在する。それらは、病態が十分に解明されておらず、診断も困難である。そのために、患者は適切な対応や治療を受けられないだけでなく、病状を周囲の人から理解されないことによる疎外感や精神的苦痛にも苦しんでいることが多い。 (提言より抜粋)






 
この提言には、医療機関での理解のみならず、広く社会に対して、慢性疼痛対策を行っていくことの必要性が謳われていますが、実際の施策や、慢性疼痛治療の実態に沿った医療制度、保険制度、福祉施策の改革まで踏み込んではいないのが現状です。
 
国際的には、慢性痛を総合的、横断的な方法で治療することが、ますます盛んになっています。投薬のみならず、リハビリテーション、カウンセリング、患者の生活自体の支援、家族や周りの支援者に対する協力、東洋医学の活用など、非薬物的療法に効果があることは、多くの調査で実証されているところです。
しかし、現行の保健医療制度で、それらの治療に保険点数が算定されず、それが、線維筋痛症をはじめとする慢性痛患者が、一般の医療機関でなかなか受け入れられない遠因ともなっていて、症状を少しでも改善しようとあがいている患者の障害となっています。
 
線維筋痛症などの慢性疼痛の治療には、多方面からのアプローチが必要です。リハビリテーションやカウンセリング、運動の指導などに、慢性痛の治療として適正な保険点数が算定され、患者がよりよい、安全な医療にアクセスする道すじが整ってはじめて、提言が具体化されたといわれるのではないでしょうか。
本提言も発表からすでに4年あまりが経過しています。最新の医学的知見、多様になってきた治療やケアを患者のもとに届け、慢性痛を治る病気にする道筋をつける段階にきているのではないでしょうか。
 
(以上 6項目)
 

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